「日本一幸せな街」に選ばれた鳩山町、埼玉の“陸の孤島”がなぜ

2022/06/12

    建設大手大東建託(東京)が行った3年間の大規模調査で、全国の50万人以上から「幸福だと思うかどうか」を10段階で聞くアンケートを実施した。
    そのアンケートの結果から、最も幸福度が高かった県は「埼玉県鳩山町民」の人たちという結果になった。
    高齢化が進み、鉄道の駅がなく「陸の孤島」とも呼ばれる鳩山町がなぜトップになったのか。
    その背景には、健康寿命を延ばすための10年以上に及ぶ取り組みがあった。
     
       鳩山町は東京都から車で約1時間の県中部に位置しており、自然豊かなベッドタウンとして発展している。
      また、人口は約1万3千人で、町内には「大型スーパーマーケット」が2店舗。
      宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究施設もあることで有名だ。
       
        鳩山町の高齢化率は、45・5%(22年4月1日現在)と、全国平均の29・1%(21年9月15日現在の推計)より高い。
        しかし、自立して日常生活を送れる「健康寿命」は2019ねんの時点で、男性84歳、女性86歳と、近年の全国平均より大幅に長いのだった。
         
          では、なぜ鳩山町には健康的な高齢者が多いのか。
          その理由は、鳩山町が起こした「東京都健康長寿医療センターとの共同研究」などによって分かったのだ。
          研究報告では、健康長寿の秘訣を「運動、栄養、社会参加」と分析し、健康寿命を延ばすための取り組み「鳩山モデル」を推進してきた。
           
            連携協定を結ぶ大東文化大スポーツ健康学部(埼玉県東松山市)、町民向けた筋力トレーニング教室を開く。
            そして、女子栄養大(埼玉県坂戸市)は、食生活改善のためのセミナーを開催。
            また、鳩山町の有志が「健康づくりサポーターの会」を作り、町内4カ所で健康教室を毎週開き、30~100人が集まって筋トレなどに継続して取り組んでいるのが、鳩山町に長寿が多い理由なのだ。
             
              では、実際の住民の声はどうなのだろうか。
               
                ニュータウンに約40年暮らす酒井貞次さん(96)は、背筋をまっすぐに伸ばし、90代とは思えないしっかりとした足取りで歩いている。
                酒井さんは「自然の中で暮らすのが夢」と、都内から鳩山町に移り住んだのだ。
                酒井さんに「幸せですか」と尋ねると、「おかげさまで子どもにも恵まれ、自分としては満足です」と満面の笑み。
                また、健康の秘訣は「運動と気配り。ぼうっとしていないで何にでも関心を持つこと」と教えてくれた。
                その笑顔からは、とても「陸の孤島」と呼ばれている町の雰囲気ではなかった。
                 
                  この町の町長も「生きがいをもてる町づくり」を推奨しており、 「健康寿命を延ばすには、生きがいを持って生活するための社会参加が大切。結果として介護費用の抑制につながることが分かってきた」と述べた。
                  町長は、待機児童ゼロを04年度から継続中で、今後は高校までの医療費無償化などを目標に掲げる。

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