社協が相次ぎ撤退 訪問介護220カ所廃止や休止に、現実になった〝ヘルパーが来ない未来〟

2023/09/20

    「年を取って介護が必要な状態になっても自宅で暮らしたい」と思った場合、頼りになるのが介護保険の訪問介護だけだ。
    訪問介護とは、ヘルパーが家に来て、家事をしてくれたり食事や入浴の介助をしてくれたりしてくへる。
    その中で、地方の町村部でその大きな担い手になっているのが「社会福祉協議会」(社協)という公的な役割を持つ団体である。
    ところが、ここ数年、全国各地でこの社協が訪問介護の事業をやめる例が相次いでいる。
    「ヘルパーをよこしてくれるところがないから、家で暮らせない」
    そんな事態が静かに進んでおり、社協が訪問介護をやめた自治体を訪ね、背景や影響を調べた。
     「社協」とは、民間の介護・福祉サービスが多くある大都市圏では、存在感がそこまで強くないが、地方では住民生活に大きな役割を果たしている。
    社会福祉法という法律に基づき設置されている団体で、47都道府県と1741市区町村全てにある。
    また、介護や障害福祉サービス、子育て支援のほか、赤い羽根で知られる共同募金運動への協力といった事業を実施している。
    住民や企業から集めた会費、自治体からの事業委託費や補助金などで運営していて、災害時のボランティアセンター開設、生活困窮者らへの資金貸し付けも担う。  
    多くの社協は介護保険事業もやっているが、近年、訪問介護をやめる例が続いている
    。都市部で一般の民間事業者との競合を理由に撤退するケースもあるが、多くはヘルパーの高齢化や人手不足、事業の収支悪化などが要因だ。
    地方では高齢者の人口も減っているため利用者が減少している事や訪問先への移動距離が長く、事業の効率化が難しいといった事情もある。
    また、「訪問介護は赤字」という社協は多い。
    過去には、全国社協の機関誌で好事例として取り上げられたほどだが、その後状況が一変。高齢になったヘルパーがここ1年余りで次々と辞め、収入減で再び赤字に。
    担当者は「新しいヘルパーを募集しても、誰も来ない」とため息をつく。
    全国的に見てもヘルパーの約4人に1人は65歳以上。
    厚生労働省によると、2022年度時点の有効求人倍率は15・53倍で、深刻な人手不足にある。
    2019年にはヘルパー3人が「移動や待機の時間を考慮しない低賃金が人手不足の原因で、政府に責任がある」として、国に賠償を求めて提訴。東京高裁で係争中だ。
     
       厚労省は「移動などの時間も介護報酬に含まれている」との見解だが、見直しを求める声は自治体からも上がる。
      来年度は介護報酬の改定年に当たる。
      厚労省は「必要な方策を検討する」として、訪問介護と通所介護(デイサービス)の両方を提供する複合型サービスを新たに設ける方向で検討している。
      ただ、これは主に都市部を念頭にした案であり、財源の制約が厳しい中、どこまで実効性のある対策を打ち出せるかは不透明だ。
       
        今後は「介護ヘルパーの機能を最大限生かすために、都心部に移る」ということも検討せざるおえなくなるであろう。

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