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命を守る訪問看護師へ無差別テロ
2023/03/05
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2013年、神戸市にある北須磨訪問看護・リハビリセンターでは、患者宅での訪問看護を終えて事業所に戻ってきた30代の女性看護師の様子が変わり果てていた事件があった。
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女性看護師は、酒に酔ったような足取りで室内を歩き回り、上機嫌で職員に話しかけ始める。
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最初は、ふざけているのだろうと笑って見ていた所長の藤田愛さん(57)だったが、かみ合わない会話に「クスリをやられた」と直感したそうだ。
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在宅医療を担う医療従事者が、訪問先の患者らから暴力やハラスメントを受けているのが問題視されている。
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その被害はかなり深刻であり、2022年1月には、医師が埼玉県ふじみ野市にある住宅に呼び出され、担当していた高齢女性の息子に散弾銃で撃たれて死亡した事件もあるほどだ。
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これから医療従事者の安全をどう守るべきか。
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長年、この問題に取り組んできた所長の藤田さんに、現状と課題を聞いた。
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様子がおかしくなった女性看護師は、その患者宅を半年前から訪問していた。
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実は、訪問を始めてからの半年間にも体調の異変はあったそうだ。
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藤田さんは他の職員から「看護師の様子がおかしい」と連絡を受けていたが、看護師に確認すると、返答は「風邪気味だから大丈夫です」と言われた。
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口調も明るく、休養するよう伝えたが、それ以上のリスクを予測できなかったのだ。
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そのため、担当の変更などはせず、この日も看護師をそのまま送り出していた。
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意識が戻った看護師に後で確認したところ、訪問先で夫婦の家族だという男性からお茶を出され、飲んだという。
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規定では訪問先で出された飲食物を口にしてはいけないとなっている。
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ただ、看護師もいったんは断ったものの、温め直しをされ、何度も勧められていた。
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「相手を傷つけてしまうかもしれない」という思いから、せっかくの厚意をむげにできなかったという。
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戻ってきた看護師は、意識障害を起こして緊急入院。
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点滴を打ったが、目を覚ましては起き上がろうとしたり、幻覚のせいか手を振り回して暴れたりした。
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「休んでいて」と落ち着かせたが、「所長すみません」とろれつが回らないまま、うわごとのように繰り返した。
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センターに対する説明では、この住宅は訪問介護を利用する妻と、夫の2人暮らし。
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お茶を勧めた男性が同居していることは知らされていなかった。
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初回訪問時も姿は確認できず、警察に通報したが、治療の後だったため証拠が足りず立件には至らなかった。
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この男性が違法薬物を取り扱ったとする罪で執行猶予中だったことを警察から聞いたのは、ずいぶん後のこと。
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藤田さんの活動の原点にあるのは、女性看護師が復帰した時に交わした約束。
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「私は看護が好きだから辞めません。所長も辞めないでください。同じような被害者が出ないように頑張ってほしいんです」
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藤田さんは現在、全国で訪問看護師らを対象にした研修会を実施。
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どこからが暴力やハラスメントかを考えてもらい、具体的な訪問場面を想定したグループワークを行っている。
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その際に「ケアの提供と暴力の容認は違う」と強調し、被害に苦しむ看護師らには経験をもとに親身にアドバイスしている。
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